【MARVEL】This is my selfishness
第8章 8th
『わ、わたしドレスなんて持ってないですよ?』
パーティーと言えばやはりドレスコードもあるはず。生憎、わたしは生涯でパーティーはもちろん、結婚式などでさえ経験がない。あるとしたら学生時代のプラムくらいだけど、その当時の服だって子供のパーティーでギリギリ着れる程度のカジュアルなものだった。なんなら今はもう持っていない。
しかしロンさんはわたしの悩みを一蹴した。
「ドレスや靴なら店と私の家にあるわよ。キャストちゃん達が準備できなくても大丈夫なようにある程度揃えてあるわ。私の趣味も兼ねてね」
と、ウィンクする。
そういえばお店のロッカールームに箱に入った靴やクリーニングに出したあとのドレスやらがあるんだった…。
「お前さんの分は俺が貸そう。ロンのだとサイズが大きいだろ」
ルドルフさんがバッキーに言う。2人は背丈が似ているから、長身のロンさんよりはサイズが合いそう。
「ってことでこれ招待状ね」
そう言ってロンさんから白い封筒をわたされる。白地に金色で装飾されたその封筒の中には深い赤の硬い紙が入っていた。
『…仮面舞踏会…?』
紙には鈍く光る金色でパーティーへ招待する旨と仮面舞踏会という文字、そして右端に妖しく光るマスケラの絵がついていた。
「マスクはこちらで用意しているから新たに準備してもらうことはないよ。舞踏会とは言うけど踊るも踊らないも自由さ」
レオポルドさんがわたしの両手をとる。
「20時から始まるんだ。ホテルの会場を使うからホテルの部屋も使ってもらっていい。どうだい?」
チラリとバッキーを見てみると、探るような目でわたしを見ていた。わたしに判断を任せる、ということかな?
『2人で行っていいんですよね?』
「ああ。パートナー同伴ということでね」
『それだったら…バッキーもいい?』
わたしの様子を伺っていたバッキーに聞くと、彼は頷いてくれた。
『じゃあ、お願いします』
パーティーに招待してくれるレオポルドさん、ドレスを貸してくれるロンさんに頭を下げると2人とも「もちろん」と応えてくれた。