第58章 情交 ※
「20年………私、生まれたばっかり………。」
「……………。」
おかしな沈黙の中で目が合う。
「―――――途端に犯罪っぽい匂いが―――――。」
「言うなナナ。」
「エルヴィンが20歳の時、私は5歳―――――……。」
「言うな、今はもう関係ないだろう。」
エルヴィンは顔を片手で覆って、気まずそうに呟いた。
「―――――ふふっ……おかしい。」
私が笑うと、エルヴィンも笑った。
「――――年甲斐もなく、君に溺れる俺を笑ってくれていい。」
そう言って、小さくキスをくれた。
「やっと見つけたんだ。出会うべくして出会ったと思った。あの王宮で君を見つけた夜だ。」
「この世界で15年も、待っててくれたんですか。」
「そうだ。そこから見つけるまで17年だぞ?更に手に入れるまで3年だ。」
「ふふ……また適当なこと言って………。」
「ひどいな。」
「…………私を、見つけてくれて、ありがとう。」
段々とぼんやりとしてくる。
私はどうも情事の後の睡魔に弱い。
うとうとと目を細める私の頭を撫でて、エルヴィンは優しい声色で呟いた。
「眠っていい。君をこうして抱いて、俺も眠るから。」
「――――――泣いても、意識を失っても、やめられないって、言った………。私、最後まで……できますよ。大丈夫だから………。」
自分だけ果ててしまったことが申し訳なくて、まだ持て余しているその熱を解放してほしくて、上体を起こしてエルヴィンを見下ろした。
「―――――続き、しましょう?」
「―――――………本当に、綺麗だな………。」
見下ろす私の髪を指に絡めて、見惚れるように言葉を漏らした。
その指は私の頬をすり、とかすめて、唇を撫で、顎の下をまるで猫の喉を鳴らさせるようにすりすりと撫で、首筋をなぞって降りて行く。