第58章 情交 ※
「――――――……ん………。」
たかが指一本でなぞられるだけで、熱に浮かされる。
その指が私の胸の頂きをぴん、と弾くと、思わずまた声が漏れる。
「―――――あ…っ……。」
その様子を楽しむように眺めていたエルヴィンが口を開いた。
「―――――嬉しいが、明日はまた馬で移動だ。」
「??はい。」
「おそらく腰が立たなくなって、移動に支障をきたすから。」
「えっ。」
「本気を出すのは調整日の前夜にしよう。」
「~~~~~っ………。」
「ほら、それに君の目はもうとろんとしている。眠いんだろう?」
その指がまた顎先に戻り、小動物を愛でるようにすりすりと撫でて来る。なぜだかそれがとても心地良くて、私はエルヴィンの逞しい腕にまた頭を預けた。
「―――――うん………。」
「おやすみ、ナナ。」
微笑んで唇を甘く合わせて、エルヴィンは私の頭に顔を埋めた。
腕の中で、雄々しくて優しい匂いを感じる。
―――――リヴァイさんのそれとは、全く違う。
エルヴィン自身の匂いに混ざる、ほんの少しの人工的な大人の香りは、整髪料なのかコロンの香りか。
この香りが、私の常になっていくんだ。
今度聞いてみよう、この香りが何なのか―――――
そんなことを思いながら、深い眠りに落ちて行った。