第58章 情交 ※
「―――――ここまでなら、痛くないか?」
「はい………、っあ、ん、はぁっ……、あぁ……っ……。」
「――――敬語じゃなくていいよ。ただの男と女だ。―――――しかも俺の方が君に惚れてる、君は俺を傅かせている立場なんだから。」
「そ、んな………っ……こと……っ………。」
どうにも呼び捨てにしたり敬語なくして話すということに違和感が拭えず、困ったように口をつむぐと、その律動を停止して私の耳に唇を寄せてその低く甘い声で囁いた。
その声は心臓に響くほど低音で艶があり、体がビクッと反応してしまう。
「―――――ほら、突くのをやめてしまうよ。言ってごらん、どうして欲しいのか。」
「―――――っ………。」
「――――満足できないだろう?上手に言えたら、もっと乱して、もっと気持ちいい事を教えてあげよう。―――――ほら、ナナ。」
「………っ……いて…………。」
「ん?」
その声と、刺激を与えてもらえないもどかしさに誘発されるように、私は腰を揺らして懇願していた。
「―――――……っ……突いて……エルヴィン……………。」
その言葉を発した時のエルヴィンの笑みは、策士の笑みだった。
「―――――一度でいいのか?」
「―――――ぁうっ……!」
その滾った男性器で私の中を一度ずん、と重く貫いた。
そしてまた停止する。
なんて意地が悪い。
めちゃくちゃに、なにもわからなくなるくらいされた方が、マシかもしれない。
もうそこに、純粋で無垢な私は面影さえなかった。言わされるがまま、いや、望まれたことよりも更に自分の淫欲を乗せて、媚びていた。
「……もっと、もっと突いて……っ……。きて、エルヴィン……っ………なにも、わからなくなるぐらい…………して…………っ………!」
「――――はは……っ!―――――――最高だな、君は。」
エルヴィンは微笑交じりにそう零すと、覆いかぶさっていた上体を起こして私の腰を掴んで少し浮かせた。
引いた腰をばつん、と打ち付け、私の中に何度も何度も突き入ってくる。
子宮が、揺さぶられるのが分かった。