第5章 絶望
「もう一つは、この閉ざされた世界を変えたい。ウォールマリアの侵略により、混沌とした街で二か月、無我夢中で医療に従事しました。でもこのままでは、私たちはやがて巨人に淘汰されるか、壁の内側で殺し合うしかない。……一人の医師が、一人患者を多く助けたくらいではこの惨状は覆らない。一刻も早く、この囚われた世界から脱することこそが、人々を救う唯一の道だと、そう考え、壁の外に可能性を見いだせる調査兵団に入りたいと志願しました。」
「………なるほど。」
「必ず役に立ってみせます。だからどうか、入団を認めてください。」
「私としては、願ってもない申し出だ。君ほどの医療従事者なら医療班編成にも一役買ってもらえそうだ……が、そこの明らかに不満を呈している兵士長にも、意見を聞こうか?」
「ああ、反対だ。こいつを部下に抱え込むなんて面倒は御免だ。」
エルヴィン団長がリヴァイ兵士長に横目で発言を促した途端、リヴァイ兵士長から容赦ない拒絶の言葉が発せられた。
「何がそんなに問題だと思う?」
「王都生まれの王都育ち、おまけに名門オーウェンズ家の令嬢だ。そもそも訓練兵としての二年間を経験しないまま兵士になれるようなずば抜けた身体能力があるとは思えねぇ。一人前に動けねぇ兵士は足手まといだ。」
「そんな……っ、一応馬術は心得ていますし、訓練だって……一生懸命やります!足手まといにならないように……!」