第5章 絶望
「ああ、この度団私が新しく団長に就任してね。編成を組みなおしたところなんだ。新しい役職として彼には兵士長に着任してもらったのさ。君との話をするにあたって、彼が兵士長として同席すると申し出たためにここにいる。」
「さ、さようでございますか。エルヴィン……団長。」
絶対私の入団を阻止する気だ……!兵士長という肩書きさえも駆使して…!想定外の出来事に多少怖気づくも、ここで折れるわけにはいかない。
「……さて、君の話を聞こうか。私に話したいことがあるんだろう?」
エルヴィン団長が、蒼天のような深い蒼の瞳で私を見つめる。
「……はい。私は調査兵団に入団したく、ここに来ました。医務室での診療や……いえ、雑用でもなんでもやります。私の入団を認めて頂けませんか。」
リヴァイ兵士長が目を細める。私は拳に力を込め、圧倒されないよう自分を鼓舞する。
「……動機を聞いても?」
エルヴィン団長は変わらない表情のまま、心の奥底まで見透かしそうな眼で私を縛る。私は、ワーナーさんから受け継いだ、古の言語で歌を歌った。
エルヴィン団長の表情が、初めて見る驚きと好奇心に満ち溢れた表情に変わる。
「ナナ………今のは………何の歌だ?聞いた事のない言葉だ………!」
「これは、かつて栄華を極めた文明で使われていた言語です。入団動機の一つ目は、私の夢を叶えるためです。私は……壁の外の更に向こう、海を越えた文化や国々に出会いたい。私は信じているのです。この遥か空の下に、違う生き方をしている人間がいるのだと。」
「…………!」