第57章 洞観
「エルヴィン団長……っ、ご冗談を………!」
そんな私に、ピクシス司令は冗談半分、本心半分といった様子で口を開いた。
「―――――ナナ、賢明な判断だ。こやつは怖いぞ。嫁に行くなら腹を括らんと。」
「―――――は、はい………。」
私の心の奥底を覗こうとするような視線を向けて、ピクシス司令は微笑を湛えていた。
そこに、エルヴィン団長の背後から声が飛んできた。
「―――――ピクシス司令、お話中失礼致します。おいエルヴィン、ザックレー総統がお呼びだ。」
「いいや構わんよ。」
憲兵団のナイル師団長だ。
「ああナイル、ありがとう。―――――ナナ、答え合わせに、行こうか。」
「―――――は、はい……!」
「では失礼ですがピクシス司令、私たちはこれで。」
「ああ。そうだナナ、その怖い男に愛想を尽かしたら、いつでもわしのところへ来るがいい。美女は大歓迎じゃ。」
「はい―――――」
「―――――ナナは渡しませんよ、例えピクシス司令でも。」
私が答えようとした瞬間、振り向きざまにエルヴィン団長はピクシス司令に不敵に笑みを向けた。
その様子を見たピクシス司令は、やれやれといった表情でふっと笑ったまま、私たちを見送ってくれた。