第57章 洞観
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定例の王都招集会議。前回よりもやや緊張は解けたものの、まだまだ慣れない。
「―――おおエルヴィン。こないだは世話になったな。」
「―――――ピクシス司令。」
エルヴィン団長と共に、その成熟した精悍さを湛える人物に敬礼をした。
兵団の中で最も多くの兵士を抱える駐屯兵団の責任者、ピクシス司令だ。
ピクシス司令はエルヴィン団長の後ろにいた私を覗き込むような仕草をして、にこりと笑った。
「前回から気になっておったんじゃが――――――、その美女はどちらさんかの?」
「ご紹介が遅れて失礼しました。ナナ、ご挨拶を。」
「はい、調査兵団団長補佐兼医療班のナナ・オーウェンズです。ピクシス司令、以後お見知りおきください。」
「ほお…………、君があのオーウェンズの才女か。噂では、すでに立体機動も問題なく使いこなしておるとか。」
「いえ、他の兵に比べるとまだまだです。」
「はは、謙遜せんでいい。いやしかし、エルヴィンがいつまで経っても浮いた噂一つなかったからな、男色家なのかと思っておったが。ただただ理想が高かったのだな。」
変人、と名高いピクシス司令は、ニヤニヤとしながらエルヴィン団長の顔を見上げた。すかさずその横に控えていた、女性の副官がピクシス司令に釘を刺した。
「ピクシス司令、失礼ですよ。」
「あぁこれは失礼。いやそれにしてもようやく見つけた存在なら大切にせんといかんぞ、エルヴィン。いっそ嫁にもらえばどうじゃ?君もいい歳だろう。」
「――――本当に、喉から手が出るほど欲しいのですが、彼女がなかなか首を縦に振ってくれないのです。」
エルヴィン団長が笑顔を崩さずそつなく答える。
しかしその返答があまりに情熱的なものだったことにピクシス司令も、副官の女性も目を丸くした。
思わず私も赤面し、狼狽える。