第57章 洞観
幹部の皆さんが団長室を出て行かれてから、カップを片付け、エルヴィン団長が盗まれたとしていた資料を元の場所に戻した。
「―――――そういえば、なぜお父様からの手紙まで盗まれたことにしたのですか……?」
小さな疑問をエルヴィン団長に投げかける。
この手紙のことは私しか知らないはずで、盗まれた設定のものの中に含める理由が、どうにもピンと来なかった。
「―――――確かめていた。リヴァイの反応を。」
「リヴァイ兵士長の………?」
「――――君と私だけの秘密の話が、リヴァイに漏れていないか、確かめていた。」
「…………!」
本当に怖い人だ。
「信頼に足りませんか、私は………。」
「いや?ただの遊び心だよ。」
私は悔しくて、不満の色を露わにエルヴィン団長を見上げた。
「私で遊ばないでくださいと何度も言っています。」
「――――悪かったよ。」
「…………。」
冷ややかな目でエルヴィン団長を一瞥して、片付けに戻る。すると背後からその大きな身体に抱すくめられる。
「なんですか……、まだ執務中です………!」
「―――――じゃあもうやめる。」
「は?」
そう言うとエルヴィン団長は、ループタイを外して、髪を手櫛でかき上げた。
「ちょ、そんな子供みたいに……、まだ仕事残ってますよね………っ……?!」
「君がいなくなってから仕事はする。君がいてくれる間にしか君に触れられないのに、今つまらない仕事をするのは効率が悪いだろう?」