第57章 洞観
「ああ、年の暮れに気になる情報を得てから私がケイジとずっと連絡を取り合っていて、マシューの入団に合わせてもらった。―――――信用に足る、正義感の強い男だ。嘘はないと言い切れる。」
「―――――……用意周到だな。」
ミケさんが呟いた。
幹部の皆さんも、私も一切知りえないところで着々と手を打っているエルヴィン団長はとても頼もしいのだけれど、置いてきぼりにされているような、信じてもらえていないような、そんな僅かな寂しさを感じた。
「てめぇのとんだ茶番に付き合わされるのに、まぁまぁ俺はうんざりしてきてるぞ?エルヴィン。」
「まぁまぁリヴァイ。結果エルヴィンの想定通り、片方は炙り出せたんだから………。」
「―――――だが、もっと俺達も頼って欲しい。」
いつもエルヴィン団長の判断を忠実に信じて守るミケさんが、珍しく本音を漏らしたように告げた。
私も含め、幹部の皆さんがミケさんの言葉に同調して頷いた。
「―――――てめぇのイカれた脳内がどうなってんだか知ったこっちゃねぇし、到底理解しがたいがな。それでもお前と同じ道を行くと決めた俺達には、知る権利も考える権利も、お前を止める権利だってあるだろうが。」
「―――――そうだよエルヴィン。あなたの頭で考えることはいい。頼りにしてる。だけど一人で判断しちゃうと、全ての業を一人で背負うことになるんだ。重い荷物は、私たちにも分けてよ。―――――って、リヴァイも言いたいんじゃないかな。口は悪いけど。」
「―――――………そうだな、その通りだ。リヴァイ、ハンジ、ミケ。これからはもっと素直に甘えるとしよう。」
「――――ナナもいるよ。」
ハンジさんが私を見つめて、柔らかく笑ってくれた。
「――――あぁそうだった。優秀な補佐官もね。」
小さな事件は幕を閉じた。
だが、その幕の裏側に潜む脅威の存在を確かに認識した結果になった。