第57章 洞観
「マシューは諜報員の線が濃くて、しかも相当な手練れってことだよね……?どうする、拘束する?いやでも……まだ何かしたわけでもないから………それもマズいか……。」
「―――――もう一人、いるって、ことですよね………?しかも、マシューさんは………それが誰なのか、知らない……?ケイジさんだと思い込んで、声を、かけた……?」
思わず疑問を口にしてしまった。
「―――――そうだ。マシューはほぼ黒で確定だ。私が更にあぶり出したいのは、そのマシューが、存在していることは知っているが、どこの誰かを知らない、もう一人の同業者だ。」
「―――――………。」
背筋を逆撫でされたような気持ち悪さが襲う。
幹部の皆さんも総じて、同じように難しく不安を隠せない表情をしている。エルヴィン団長は腕を軽く組んだまま、推察を口にする。
「マシューともう一人の諜報員は、別の組織から宛がわれている線が濃い。且つ、マシューが警戒するほどだ。危険かもしれない。こちらをあぶりだすために、マシューは泳がせておこうと思う。まぁもちろん、監視は引き続きケイジに任せるがな。」
「マシューを泳がせるってことは、マシューの大元は押さえてるの?」
「――――ああ、その答え合わせは来月してくる。」
エルヴィン団長がコーヒーを飲み干して、机に置いた。
「――――おい待てエルヴィン、てめぇはケイジをまるで疑ってねぇが、ケイジもそっち側で、今の報告が嘘だと言う線はないのか。そんなことがありゃ踊らされるだけだぞ。」
リヴァイ兵士長の言う通りだ。
ケイジさんだってマシューさんと同じ立場で、どこかから密命を受けてここに来た可能性だってあり得る。
でもエルヴィン団長が確証もなく、ケイジさんに内々に指示を出すとも思えない。
「まさかエルヴィン、ケイジが遅れて入団したのって――――――。」