第57章 洞観
幹部の皆さんの視線が集まり、焦ってしまう。
けれど、何かの役に立つなら―――――そう思って、僅かな可能性かもしれないけれど、自らの考えを話した。
「―――――犯人を捜しても、いないと思います。」
「―――――ん?!」
「…………。」
「………ナナ、情報が不足している。説明しろ。」
ハンジさんもミケさんもリヴァイ兵士長もあっけにとられた表情をしているにも関わらず、エルヴィン団長だけがどこか満足げに私を見つめる。
ドキドキしながら、リヴァイ兵士長に促されて続きを話した。
「―――――わざわざ私を待って―――――自分以外の目撃者を作って、自分で荒らした自室に入って被害にあったフリをされた真意は何ですか?エルヴィン団長。」
私が昨日詰め切らなかった問を今度こそ真っすぐにぶつけると、エルヴィン団長は満足げに笑った。
「はははっ!すごいな私の補佐官は。おちおち隠し事もできないな。」
「え?!?!」
「エルヴィン………お前………。」
「ちっ………クソ眉毛………。」
「――――そう睨むなよ。別に悪戯をしたかったわけじゃない。撒く餌は、よりリアルな方が食いつくだろう?」
そう言ってエルヴィン団長は、盗まれたはずの資料を胸元のポケットから取り出し、机にぱさ、と置いた。
それを見た幹部の皆さんは、呆れたような完敗したとでも言ったような顔をして、それぞれソファの背に寄りかかった。
その時、団長室の扉がコンコンと鳴った。
「どうぞ。」
「――――失礼します。」
部屋に入って来たのは、奪還作戦で抜きんでた力を見せたグンタさんやゲルガーさん、モブリットさんに続き、3月に正式に入団したケイジさんだった。
「――――ケイジさん………?」
ケイジさんは律儀に立ち止まって敬礼をすると、エルヴィン団長の方へ歩み寄り、メモを手渡した。