第56章 事件
いとも簡単に、ソファに背中が押し付けられ、その手首を抑えられた状態でエルヴィン団長が私を見下ろす。
その目は、とんでもないほどの色気を纏っている。
―――――毒々しい色気だ。
「この心も身体も、俺のものになる覚悟があると受け取っていいのか?」
その核心を突く問に即答できるほど気持ちの整理はついていない。なんと答えるべきか悩んだけれど、結局はそうなることを見越して自分で決めたことだ。
「――――――――は、い…………。」
観念したように小さく呟くと、エルヴィン団長をその凛々しい眉を下げて目を細め、まるで初めて欲しかった物を手に入れたとでも言いたげに、愛しいという顔を見せた。
そんな顔を、するんだ――――――。
私がまた新たに見つけた、エルヴィン団長の違う顔だ。
「―――――今はまだその心にリヴァイがいてもいい。徐々に徐々に、俺のことしか考えられなくしてあげよう。略奪と侵略は、割と得意だ。」
「―――――っ………。」
そう甘く囁きながら、頬から瞼、あらゆるところにキスを降らせてくる。
「―――――あの、でも待って欲しいです………その、今日は全く心の、準備が――――――……っ………!」
「そうだな、今日はここまでにしておこう。今日は――――――リヴァイも不在だしな。」
「!!!!」