第56章 事件
ハンジさんとミケさんを伴って戻ると、2人は息を飲んだ。
「こりゃまた………派手にやられたね………。」
「――――――何か盗られたものはあるのか?」
「―――――………出資者の情報をまとめたリストと、次の壁外調査の計画書、人員配置図だな。あとは―――私の父が書いた手紙だ。」
「!!!」
私は驚いてエルヴィン団長を見た。
「――――それだけ……?調査兵団団長の部屋から盗りたいものなんて、他にも―――――予算案や兵士名簿なんかは手つかずってこと………?」
「ああ。」
「――――何を目的にしていたのか、いまいちつかめないな。――――――あと………。」
ミケさんがスン、と鼻を鳴らした。
「―――――変な奴の匂いも、特にしない。」
「―――――入った時、窓が全開にされていたので―――――……匂いも、流れてしまった、のでしょうか………?」
私も恐る恐るその時の状況を口に出した。
「――――目撃者を募る?エルヴィン。」
「―――――そうだな。明日にでもみんなに伝えよう。リヴァイも戻ることだしな。」
「了解。明日また夜集まろう。皆に話した時のみんなの反応も、しっかり見とくよ。」
「―――――承知した。」
ハンジさんとミケさんは少々不安げな顔をしつつも、今これ以上ここで話しても手がかりも掴めそうにないことを割り切っていた。
「ナナ、ここの片付けはお願いしてもいい?」
「はい、お任せください。」
「―――――よく働く補佐官がいていいな、エルヴィン。ナナを大事にしたほうがいい。」
ミケさんがそう言って、小さく私の頭を撫でてくれた。
「―――――ああ、それはもう大事にするよ。」
エルヴィン団長がふふ、と笑った。