第5章 絶望
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ハンジさんの巨人に対する研究の熱は凄かった。
私はすぐにその熱に引き込まれた。
倒すべき相手のはずが、ハンジさんはまるで愛しそうにその生態について考察を語る。そんなハンジさんに感化され、私も考えうる限りの考察を話した。真っ暗な暗闇を、部屋の蝋燭の灯だけが照らしている。
何かに熱中している時間が、心地良かった。残酷な事実を、全て忘れられる気がしたから。
「……おっと、もう夜が明けてしまうね。つい夢中になっちゃって、悪い。」
「平気です!私まだ……。」
ハンジさんが伸びをして、この時間の終わりを告げた。私は名残惜しいという感情を口に出すが、ハンジさんは優しい目をして私の髪を撫でた。
「ここ二か月……色んな事があったんでしょう?少しだけでも、眠ったほうがいい。ほら、可愛い顔が台無しだ。」
「………はい……。」
私はハンジさんが譲ってくれたベッドに横になると、ハンジさんが手を握ってくれた。眠る時、手を握って貰ったのはいつ以来だろうか。
私は暗闇と恐怖に飲まれることもなく、その手の温もりを頼りに、深い眠りについた。