第56章 事件
翌日、訓練の片付けをしてから団長補佐の執務の合間に、ペトラに対巨人の戦闘の練習に付き合ってもらっていた。
「――――ナナさんは身体が軽いから、一度で削ぎ切るのは多分難しいかもしれないですね。」
「………うん………。」
「だから最初から連撃にするつもりで――――――。」
ペトラは真剣な表情でブレードの振り方、切り込み方を体現しながら教えてくれる。
オルオと並んで、100期の中でもペトラの実力は知れ渡っている。立体機動や戦闘力、そして判断力など総じてバランスが良く、頭もいい。
見本を見せるように、ペトラが巨人の模型の上空に舞い、そこから項に向かって斬撃を的確に入れる。
「―――――ペトラも大柄じゃないのに、どうしてそんなに綺麗に斬撃を入れられるの?すごい……!私もそんな風に、なれるかな……!」
私がペトラの見本に見惚れて思わず声を漏らすと、ペトラは少し照れたように俯いた。
「わ、私もまだまだで――――――……リヴァイ兵長に声を掛けて、以前―――――助言をもらったんですけど………ちょっと兵長のは常人では体現が難しいというか……だから私なりに色々試行錯誤してます。」
「―――――そう、なんだ………。」
ペトラの口から出るその人の名前を聞くだけで胸が軋む。
そんな私の反応を、ペトラは見逃さなかった。
「―――――ナナさん。」
「ん?」
「―――――リヴァイ兵長となにかあったんですか。」