第56章 事件
「どうした、随分な心境の変化だな。エイルの名を捨てたことといい―――――――。」
「―――――これ以上足を引っ張りたく、ないので………。医療班の子達だって戦えるのに、私だけが守られなきゃいけないのはもう――――――嫌です。」
自分の不甲斐なさを、弱さを克服したい。
戦えるようになったら心も強くなるわけじゃないけれど、何かをしていないと、また私はずぶずぶと昏い沼にはまって身動きが取れなくなってしまうから。
目を伏せて拳を強く握りしめる私をエルヴィン団長はじっと見つめて、ふっと小さく息を抜いた。
「―――――構わないよ。君の根性は誰もが認めている。ただ、無理をし過ぎないようにすることが条件だ。」
「――――はい!ありがとうございます……!」
エルヴィン団長の横に並んで、この世界の真実を暴くと決めた。
守られるだけの存在では、横になんて到底並べないということを、西部調査でまざまざと思い知った。
まず出来ることは、戦えるようになることだ。
―――――とはいえ、いきなりみんなと同じ訓練に参加するとさすがに迷惑になるのは目に見えているので、個別に教えを乞うことにした。