第55章 南方駐屯訓練兵団
「―――――好き…………。」
まるで子供のようにぼろぼろ零す涙の合間に漏れ出る言葉。
「―――――あぁ、ありがとな。」
サッシュは立ち上がって、あたしを片腕で抱き寄せた。
その手はがっしりと力強くて、訓練兵の時にあたしに差し伸べてくれたそれとは、まるで別人のものみたいだった。
「―――――もうちょい、時間くれよ。俺もまだ、動揺してるから………。」
「―――――うん………。」
甘えるようにその首筋に顔を寄せると、サッシュが顔を真っ赤にして顔を背けたのが見えた。
「―――――よしっ!」
照れた顔を隠すようにサッシュはいきなりあたしを抱き上げた。まさか好きな男の部屋で抱きかかえられる経験なんかあるわけもなく、動揺と混乱で顔に熱を持つ。
「えっ………!」
サッシュはベッドにゆっくりあたしを降ろす。
近距離で目が合うと、心臓が飛び出そうなほど鼓動が強く、早くなる。
唇と唇が触れそうなその瞬間、あたしの身体にしっかりと布団がかけられた。
「――――――え?」
「な、寝ろ!酔ってんだ、お前も、俺も。」
「……………。」
白けた目でサッシュを見ると、懐かしそうに少年のような顔で笑った。
「―――――昔を、思い出すな。世話のやける妹みたいだった、お前は。」
「…………ああ。」
ベッドの脇に腰かけて、あたしの頭をそっと撫でる。