第55章 南方駐屯訓練兵団
「――――どうやったら、あたしのこと女だと思ってくれる……?」
「―――――………。」
「この身を、差し出せばいい?」
「―――――…………。」
ゆっくりとサッシュの方へ近づく。
シャツのボタンを、一つずつ外しながら。
手を伸ばせば触れる距離まで来ると、窓辺に座ったサッシュはあたしを動揺した目で見上げた。
「――――……あたしは綺麗でもないし―――――……汚れてしまって、いるけど……。それでも―――――差し出せるものは、全部あんたにあげたい。サッシュ。」
どうせ動揺して逃げ出すか、はぐらかすんだろうと思った。でも、サッシュの手はあたしの腕を強く掴んだ。
「―――――汚れてるとか言うな。」
「―――――………。」
「お前が一生懸命戦って守ってきたものを、お前自身が汚れてるとか言うな。」
「―――――………真面目かよ。」
「真面目で悪いかよ。」
「―――――………普通そんなところ引っかからないだろ………。女から迫ってんだぞ?ヤることヤって………捨てちまえばいいのに。」
「―――――冗談でも言うなリンファ。お前はそんな安い女じゃない。」
自嘲気味に笑ったあたしを、サッシュが鋭い目つきで睨んだ。
なんなんだよ。
いつもの馬鹿で軽い調子でいりゃいいのに。
なんであたしの弱いところばっかり、その馬鹿真面目な目で突き刺すんだ。
泣くはずじゃなかった。
笑って、バーカって、冗談だ、って言いたかった。