第55章 南方駐屯訓練兵団
「俺の後をリンファが追ってきて、そのリンファを追ってアーチが駆けて来るんだ。」
「………懐かしいね。」
「―――――俺が訓練兵団に入ってからは、辛い事もあったんだろ。」
「―――――………なんで知ってるの………。」
「アーチが、心配してた。」
「そっか………。」
何を、どこまで知られているのか急に怖くなった。
お願いだから、知らないでいて欲しい。
不安で胸がいっぱいになったその時、サッシュは馬鹿真面目に、馬鹿みたいに優しい顔で言った。
「―――――よく、頑張ったなリンファ。お前はすげぇよ。」
「―――――………。」
とめどなく溢れる涙を到底見せられなくて、布団の中に潜った。しばらくサッシュはあやすようにあたしの肩をとんとんと叩いてくれていたけど、しばらくするとそれが止み、寝息が聞こえる。
「―――――寝るのかよ。」
ふっと笑いが込み上げる。
そっとその身体を引っ張ってベッドに横にならせて、その横に、あの頃のように沿う。
―――――ナナに、謝らなきゃ。
信じられないなんて嘘をついたこと。
サッシュより大事なものはないけれど、サッシュと並んであんたのことも大事だって、ちゃんと言わなきゃ。
でも今は――――――このまま、眠ってしまおう。
たまにはこんな風に、乙女みたいに胸を高鳴らせて頬を染める自分も、いいじゃないか。