第55章 南方駐屯訓練兵団
「なんだよ、お前に関係ない………。」
「おおありなんだよ!!!!」
あたしの大声に、サッシュが驚いた顔をする。
「あたしにとってあんたは――――――………っ………。」
言いかけて拳を握りしめた。
この関係でいれば、きっとずっと、側にはいられる。
でも、言ってしまえば………0か100か、しかない。
「お前にとって俺は―――――なんだよ。」
「―――――――………一番身近な、馬鹿な……連れ………。」
「―――――は、言ってくれるな。馬鹿で悪いかよ。――――いつもそうだ。俺はから回ってばっかりで、いつだって―――――欲しいものは手に入らない。」
「―――――欲しがるものが、身の丈に合ってないんじゃないの。」
俯いたまま、口元だけふっと笑って皮肉を告げる。
「あ?やけに喧嘩腰だな。帰れよ、酒がまずくなる。」
「―――――あたしにしとけよ。」
「―――――……は?」
「―――――あんたみたいな馬鹿を好きでたまらないって物好きな女、きっとあたしぐらいなんだから。」
「なに、言ってんだお前……。」
もう引き返せない。
自由の翼のついたジャケットを脱いで、その場にすとん、と落とす。
あたしにとって女の象徴である長い黒髪の隙間から、サッシュを見つめる。サッシュは息を飲んで、まるで初めて相対する奴を警戒するように、あたしを見ている。