第55章 南方駐屯訓練兵団
訓練を終えて日が沈む頃、エレンたちとの別れを惜しみつつ少し話をした。
「――――ナナ、俺は絶対調査兵団に入るから。待っててくれよな。」
「―――――エレン。調査兵団は危険だって………。」
「うるせぇミカサ。ナナなんて訓練兵団にも入らずこうして調査兵団で戦ってんだぞ!俺たちがやらなくてどうすんだよ……!」
「…………。」
ミカサから静かな怒りを込めた視線を感じた。ミカサにとってエレンは全て。あの頃から少しも変わっていない。だからこそ、エレンを危険な場所に晒したくない気持ちは分かる。
―――――私にも、そうやって守ろうとしてくれた人が………いたから。
「―――――母さんは守れなかったけど―――――………ナナのことは俺が守ってやるからな。」
「へ?」
エレンが頬を少し染めて私を見上げて言う。
男の子、なんだなぁと微笑ましく思う。
「―――――ありがとう。期待して待ってる。」
エレンの髪を撫でると、その横でミカサが静かにマフラーの中に顔を埋めた。
「俺がナナを海に連れてくんだ!」
「―――――海………?」
エレンの言葉に私は目を見開いた。
「あぁ、アルミンが言ってた。この世界には海っていう大きな水たまりがあって――――――」
「――――っエレン!!!!!」
ミカサが大きな声でエレンの言葉を遮る。
そうだ、それが正しい。
外の世界の話は禁忌で、大きな声で公の場で話してはいけない。
けれど私の心臓は何かを感じ取ったように、大きく鼓動した。