第55章 南方駐屯訓練兵団
「おう入れ入れ!歓迎すんぞ?」
ジャンの頭に腕を置いて、サッシュがおちょくったように笑う。そしてあたしの方に歩み寄って来て、あたしに肩を組んで引き寄せた。
「―――――こんな綺麗なオネェサン、いっぱいいるぜ?」
「―――――マジですか……。」
「ちょっとサッシュ!やめろよ!!」
慌ててその腕から逃れる。
心臓に悪い。やめてほしい、ほんと……。顔が熱を持ってしまう。
それを隠したくて俯いた時、あたしとサッシュを冷ややかな目で見る、髪を後ろで束ねて、そばかすが特徴的な目つきと性格が悪そうな女がいた。
その女は、まじまじとあたし達を見て口を開いた。
「―――――なぁ、おねーさんとおにーさん。」
「なに?」
「―――――どっかで、会ったことあるよな………?」
「は?俺は覚えてねぇけどな。」
「あぁ、おにーさんは頭悪そうだもんな。おねーさんは?覚えてない?」
「こんのガキ………!!!」
サッシュがイライラとしながらその女の頭をガシっと掴んだ。
「ちょっとサッシュやめなって、ガキ相手に。―――――いや、あたしもないけど。」
「ふーん………。ま、いいや。」
そう言ってその女は背を向けて去っていった。
「―――――なんだあのクソガキは………。」
サッシュが大人げなく悪態をつくのをなだめつつ、訓練に参加する時間が近づいてきたため、あたしたちは立体機動の準備をした。