第55章 南方駐屯訓練兵団
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ナナがしばらくシガンシナ区で家族のように過ごしたと言っていたエレンとミカサとかいう子達に、会えて良かった。
ナナが心底嬉しそうな顔をしていると、あたしも嬉しい。
それにしてもさっきからうるさいな。
なんだこいつらは、エレンたちの同期になるのか?さっきからブツブツと何言ってんだ。
その内容が気になったあたしは、訓練を視察するような目線で耳だけそばだててみた。
「おいおいおいおい誰だよあのクッソ綺麗なオネェサンはよ……!」
「おい落ち着けジャン、エレンの家族かなんかか……?姉がいたとは聞いてないが。」
「はぁ?!あんなクソの姉貴があんな女神な訳ねぇだろうがライナー!!よく見てみろよ!!」
「あ?俺はそこそこ綺麗だからといって簡単にお姉さんになびくような男じゃ……。」
「…………。」
「…………。」
ナナの方を見つめて、再び2人で目を合わせた。
「――――まぁ女神かもしれないな。」
「だろ?!?!は?!家にあんなオネエサンとミカサがいたのかよ……?あぁやっぱ俺あいつ一回殺して来ねぇとダメだわ。」
アホみてぇな会話してんな。ガキはガキでもオスはオスなんだな。そう思って侮蔑の混じった目線を流してみると、ジャンとか呼ばれたガキと目があった。
「――――――っ……!」
「………?」
「こ、んにちは……っ!」
「あぁ、こんにちは。―――――訓練、励みなよ。」
「は、はいっ………!」
さっきの威勢はどうしたんだか。急に顔を真っ赤にしてジャンは俯いて、またなにやら同期とくだらねぇことを言い合っている。
「―――――こっちにもいた、綺麗なオネエサン………。」
「お前黒髪フェチなのか?」
「―――――かもしんねぇ。俺調査兵団に入ろうかな……。」