第55章 南方駐屯訓練兵団
「―――――――ナナ!!!!」
ちょうど教官の休憩の合図とともにエレンがこちらに駆け出して来るから、私も思わず駆け出した。
ミカサとアルミンは遠くから、驚いた顔でこちらを見ていたけれど、エレンの後を追って駆けてきた。
エレンはすごい勢いで私に飛びつくと、その勢いに負けて私は倒れ込んだ。もうそんなに背格好が変わらないくらい大きくなっているのだから、当然だ。
「いたた………!」
「あっ、悪いナナ!嬉しくてつい!!」
慌てて上体を起こすエレンを、思い切り抱きしめた。
「―――――会いたかったエレン、大きく、なったね。」
「――――――うん。」
エレンは恥ずかしそうに私にされるがまま、大人しく頭を撫でさせてくれている。
ミカサとアルミンも続いてやってきて、私は思わず2人もこの腕いっぱいに抱き締めた。
「ミカサ………!アルミン………!よく、今まで無事で………!」
たった12歳の子達は、目を潤ませて私の背中の自由の翼を、きゅっと握りしめた。
それから休憩が終わってからも、私はエレンたちの訓練を見ていた。
あんなに小さかった子達が、なんて立派に逞しくなったんだろう……カルラさんも、きっと空から見てる。
………イェーガー先生も……。生きているのだろうか……どこに、いるのだろう………。
ノートに殴り書きされたイェーガー先生の名前………。聞きたいことが、山ほどあるのに。
そんなことをぼんやり考えていた。