第54章 勧誘行脚
2日目。
朝に私たちは実家を出て東方駐屯の訓練兵団へ向かった。
王都を突っ切ってもそこそこの距離がある。一日馬で駆り、その日の夜に到着し、訓練兵団の兵舎に泊めてもらった。
3日目。
西と同じように講義と訓練への参加を済ませ、夕方には早々に南に向けて出発し、道中で一泊。
4日目。
いよいよエレンたちのいる南方駐屯の訓練兵団へやって来た。
胸が弾む。元気でいるだろうか。
早く会って、この胸に抱き締めて、いっぱい褒めて、労ってあげたい。
――――カルラさんの代わりになどなれないことは分かっているけれど。それでも、心配していて、愛していることを伝えたい。
「―――――調査兵団からの勧誘か。」
鬼のような形相で私たちを出迎えたのは、鬼教官として名高いキース教官だ。あまりの迫力に思わず肩がすくむ。
「はい!今日はよろしくお願いします!」
サッシュさんの挨拶に合わせて敬礼をする。じろりとその鋭い目を向けられたかと思うと、一瞬驚いた顔をした。
「―――――お前………名は………?」
「はい。ナナ・オーウェンズです。団長補佐兼医療班に従事しています。」
「オーウェンズ……医療………団長、補佐………。」
キース教官は頭の中で何かを模索するような表情で目線を横にずらした。
そして何かが繋がったのか、思い出したのだろう。
ハッと小さく目を見開いて、威圧的に私を睨む。
「………?」
「―――――お前も、あいつらと同じか………。気に入らん………。」
「あいつら………?」
何のことを言っているのか、私には到底分からなかった。
「講義と訓練の時間は守れ。その他の視察は好きにするがいい。」
「はい!」
キース教官はそう言って私たちに背を向けた。
「―――――なんだあれ、おっかなすぎだろ……。」
「―――――西の教官のほうがまだマシだったな……。あたしらは恵まれてたってことだ。」
2人がひそひそと話す中、私は周りをきょろきょろと見回した。エレンと、ミカサと、アルミンの姿を探していた。