第54章 勧誘行脚
リンファと2人、私のべッドに潜り込む。
誰が聞いているわけでもないのに、自然とひそひそ声で話すのが楽しい。
「―――――狭くない?」
「いや、大丈夫。なんか―――――いいな、こういうの。あたしは姉弟もいないし、友達らしい友達も――――――いなかったから。」
「わ、私も!!!すごく、すごく嬉しい!!」
私が興奮してリンファの目を見ると、リンファはその美しい切れ長の黒い瞳を細めて笑った。
「―――――ね、リンファあそこ見て?」
「ん?」
私はベッドから、壁にかけられた少女の絵を指さした。
「あれ、カイガっていうの。」
「絵画?」
「ううん、あの子の名前。カイガ。私がつけたの。」
「紛らわしいな。」
「そう、あの絵を眺めていたらハルがね、いっつも“お嬢様は本当にこの絵画がお好きですね”って言って―――――――。」
「あぁ、それでカイガが名前だと思ったのか。」
「そう!」
「文字に書いてみれば間違わなかったかもしれないのにな。声に出すと色んな意味が違ってきちゃうね。」
「うん。」
「くだらない話。」
「えっひどい。」
「そんな話が聞きたかった。まるで人の生き死になんて関係ない、ただの友達とのくだらない話。」
「リンファのくだらない話も聞きたい。」
「――――――サッシュの態度が―――――……。」
「?!うん、うんうん!!何?!」
私は思わず上体を起こして、リンファに迫るように詰め寄った。