第54章 勧誘行脚
その後私たちはお風呂に入ってから、私の部屋に集まって翌日の打合せを済ませ、雑談に花を咲かせた。
3人でゆっくりと話をするなんて、久しぶりだ。
私はとてもとても楽しくて、ついついはしゃぎすぎてしまった。
時計の針が0時を過ぎた頃、サッシュさんがベッドに寄りかかってクッションを抱いた体勢で、私に目を向けた。
「―――――ナナは今日やけにご機嫌だな。実家に帰れて嬉しいのか?」
「はい、サッシュさんとリンファをこうして家族に紹介できて、嬉しいです!」
「―――――それだけ?」
「………え?」
「―――――なんか、あった?誕生日から様子がおかしいし――――――、不自然なほどに、“元気”を演じてるから。」
リンファの黒い瞳が私をまっすぐに見つめる。
お見通しだった。
心配してくれているんだ。
私は枕をギュッと抱きしめて顔を埋めた。
もうあれから何日も経ったのに、まだ涙は枯れることがない。でも、笑顔を貼りつけて事もなげに言う。
「ううん?何もないよ。ただ、本当に嬉しいだけ。」
「―――――そっか。」
リンファはどこか少し寂し気な顔をして、目線を外した。
「―――――明日も早い。寝るよ。サッシュ、部屋に帰って。」
「えぇ、もうここで寝ようかな俺も。なんかナナのベッドいい匂いするし………。」
サッシュさんが私のベッドにごろんごろんと転がりながら駄々をこねる。
「や、やめてください嗅ぐの……!!」
「おいおい変態こじらせたらもうおしまいだぞ?ほら、寝ろ!」
リンファに追い返されて、サッシュさんが部屋に戻った。