第54章 勧誘行脚
「御馳走様でした!!はぁーーーー美味かった!!」
「御馳走様でした。ほんとに、こんな美味しい食事は久しぶりだった。」
「だよな!まずパンすらうめぇもん。兵舎で出されるパンはなんだ?あれ木の皮とかだったんじゃねぇかと思った。」
「サッシュさん、言い過ぎです。十分美味しいですよ、兵舎の食事も。」
笑い合いながらの食事を終えてゆったりと会話をしていると、扉の開く音がした。
「――――あら、ロイ様のお帰りですね。」
リンファが一瞬、ぴく、と反応した。
私は慌ててロイを迎えに行った。
ロイにも事前に伝えてはあったから、リヴァイさんが尋ねて来たときのように多少怯えた表情を見せたものの、ちゃんと挨拶をすると言ってくれた。
たった数ヶ月ぶりなのだけど、また背が伸びたようだ。私はちゃんと姉の顔でロイに笑顔を向けた。
「サッシュさん、リンファ、紹介します。私の弟のロイです。」
「―――――初めまして、ロイです。姉がいつもお世話になっています。」
ロイはサッシュさんともリンファとも目を合わさずに、形式的に頭を下げた。
「美形!!!えっ、そっくりだな!ナナが男になったらこんな美形になるのか……!あっ、初めまして、調査兵団のサッシュです。ナナには―――――とても世話になってます。」
「―――――調査兵団の、リンファです。宜しく。」
わかってる、と言ったわりにリンファの目が厳しい。
でも抑えてくれているんだ。
リンファにとってロイは、最も許せないことをした弟に映っているはずだから。
「ロイ様、ご夕食は?」
「―――――部屋で食べるよ。ではサッシュさん、リンファさん、どうぞごゆっくり。」
ロイはそういうと早々に自室に消えていった。