第54章 勧誘行脚
「紹介します、私の世話係のハルです。ハル、私の先輩で親友の、サッシュさんとリンファさん。」
「初めまして、ハルと申します。サッシュ様、リンファ様、今晩はどうぞゆっくりとお寛ぎくださいね。」
「は、はいっ……お世話になります!」
「よ、宜しくお願いします…!」
「――――おい、サッシュ様だって。」
「初めて様付で呼ばれたよあたしも。」
またもなにやらひそひそと会話する2人の睦まじさが嬉しくて、にこにこしながら見守っていると、私の表情を見たハルが気を利かせたのだろう、サッシュさんとリンファにある提案をした。
「―――――あら。お部屋はそれぞれバラバラにとっていたのですが、サッシュ様とリンファ様は同じお部屋のほうが宜しいですか?」
「は?!?!」
「えっ?!!?」
2人が突然爆発したように顔を真っ赤にして、慌てふためく。
「あらあら初々しいですわね。」
ハルがクスクスと笑うと、リンファが小さく呟いた。
「――――いえ……っ……あの、別でお願いします……。それか――――――もしよければ、ナナの部屋に、あたしは泊まってみたいんだけど……。」
そういってリンファがちらりと私を見た。
「えっ、いいの?!もちろん!喜んで!!」
友人が私の部屋に泊まるなんて、初めての経験だ。私はリンファの手を握って、飛び跳ねた。
サッシュさんは―――――真っ赤な顔をどうすることもできないように、ただただ俯いていた。前までの彼なら、俺もナナの部屋がいい!とか言っていただろうに……その変化に、また私は顔が綻んだ。
「―――――では決まりですね。こちらへどうぞ?」
私たちはハルに促されて、屋敷に歩を進めた。その瞬間、ほんの少しリンファの手を握って、小さく小さくお願いを口にした。
「――――――リンファ、あの――――――……ロイの、ことは………………。」
「――――――わかってる。」
皆まで言わずとも、リンファは眉を下げてポンポンと私の頭を撫でてくれた。