第54章 勧誘行脚
「―――――さ、すがだな……調査兵団……。じゃ、次もう一人の―――――リンファ!」
リンファがスタート地点からアンカーを放つ。
あまりに近距離に刺さったアンカーに、みんな驚きを隠せない様子だった。
「えっ……まさか失敗……?」
「そんなとこに刺したって、うまく移動できるはずが……。」
「―――――!!!!!」
アンカーの距離が近いから、もちろん射出してから刺さるまでの時間、刺さってから移動するまでの時間が極端に短いのがリンファの立体機動だ。
俊敏に動けるのはもちろんだが、長いワイヤーを出したままにしている時間が短いので、軌道も読まれにくく掴まれにくい。
でも、デメリットもある。
次のアンカー射出標的を判断するまでの時間が極端に短い。
リンファの空間認識能力は群を抜いていて、今どこに誰がいて、どんな障害があるのか、どこに刺すべきか、どのルートをとるべきか、まるで上空からその場所を見下ろしているような感覚なんだと言っていた。
この立体機動術は誰にも真似できない。
エルヴィン団長とリヴァイ兵士長がお墨付きをするほどのリンファの武器だ。
「―――――綺麗………。」
リンファが舞う姿を見て、私の隣にいた女性訓練兵の口からその言葉が漏れた。
「―――――うん、綺麗だね………。」
リンファは比べ物にならない速さでリボンを全て回収し、私の横に降り立った。
「―――――どうだった…?あたし、魅せられた?」
「―――――惚れちゃいそうだった!さすが私の師匠!」
満面の笑みで答えると、リンファは嬉しそうに私の頭をガシガシと撫でた。