第54章 勧誘行脚
「訓練を受けずに調査兵団って無謀だと思うんですけど、具体的にどんな仕事をされているんですか?壁外調査にも出るんですか?」
「私は今、団長の補佐官と務めるとともに、医療班の編成や育成に携わっています。そして、壁外調査にも医療班として出陣します。医術は私の武器であり、私が調査兵団の医療体制を整え、調査での死傷者を減らすことができると―――――そう信じていました。――――でも、誰も死なせないと意気込んで臨んだ初めての壁外調査で、私はなにもできず――――――友人を、目の前で死なせました。」
「――――――………。」
「―――――おいナナ、さすがにそこまで言ったら、勧誘どころか――――……。」
「―――――サッシュ、ナナの思うようにさせよう。」
「――――………あ、あぁ………。」
多くの訓練兵が息を飲んだ。
「―――――悲しくて、情けなくて、不甲斐なくて、怖くて―――――。でも、敬愛する上官から教わりました。私が友人の死から学び、強くなることが、弔いになると。そうやって死にゆく者の重みが増えるごとに少しずつ、調査兵団はより強くなっていくんだと、思います。そしてそれこそが、人類にとってこの囚われた世界を覆すための武器になる。―――――だって、巨人の謎を知り、根本を解決しない限り、明日――――――またこの壁が破られるのかも、しれないんです。」
「―――――………。」
「――――大切な人に、家族に……巨人の脅威から解放された未来を齎すために………そして、ウォール・マリア奪還作戦やこれまでの調査で失われた、数えきれない命を弔うために、私たちは戦っています。どんなに厳しく惨く、辛い道でも。―――――それが、調査兵団です。」
「―――――………。」
「―――――この世界に守りたい人がいるなら――――――私たちと共に、戦ってください。皆さんの調査兵団への入団を、お待ちしています。」