第53章 惜別 ※
「―――――これは。」
「お目が高いですね!それはブラックダイヤモンドです。超希少なのでまぁ…お値段もはりますけどね。意味は――――――“不滅の愛”です。意味がなかなか重いので、小さな贈り物には向かないかもしれませんが―――――。」
「これをくれ。」
「え?」
「――――悪くない。」
ナナの透き通る肌と白銀の髪には、もっと煌びやかな色が似合うと思った。
だが俺があいつに贈るに相応しい、重く昏い意味を宿したこの石に惹かれた。
「――――相手の方とは、想い合う仲なんで?」
「――――あぁまぁ………今はな。」
「――――なら大変喜ばれるでしょう。旦那の瞳や髪と同じ色をした愛の象徴である石を、ずっと身に着けていられるんですから。」
店主は丁寧にそのブラックダイヤモンドのピアスを包装した。
「――――お待たせしました。」
「ああ。」
それを受け取る時、店主が穏やかな顔で俺をまじまじと見つめてくる。
「――――なんだ気持ち悪ぃな。」
「えっ、いや、すいません!ただ、あの……。」
「なんだ。」
「調査兵団のリヴァイ兵士長っていやぁ、人類最強と言われる人で……怖い人だと思っていたんで……いや、あのまぁ実際愛想もないし言葉も乱暴ですけど。」
「――――てめぇ客に喧嘩売ってんのか?」
「いいえそんな!なにが言いたいかってぇとですね。旦那がこの石を選ぶ時に、その女性のことをすごく考えているのがわかる、優しい表情だったんで……。血生臭く人が沢山死ぬ場所で多くの命を背負う、そんな過酷な環境の中であっても―――――――一人の女性を愛することができる人で、良かったと………思ったんです。」
「―――――………。」
「すみません、喋り過ぎましたね!」
「―――――逆だな。」
「え?」
「―――――その女を愛しているから、俺はこのクソみたいな世界でも生きていける。」
「………今度は、その方と一緒にお越しください。ぜひお会いしてみたい。」
「――――ああ。」