第53章 惜別 ※
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「―――――大切な方への贈り物ですか?――――えっ、あなたまさか調査兵団のリヴァイ……兵士長……?!」
「―――――そうだが。」
「そ、それはそれは……!誕生日の贈り物ですか?それなら誕生石なんかも―――――。」
「いや、誕生日じゃねぇ。」
ただの宝石商がクリスマスの話など知るわけもねえし、説明も面倒だ。
「――――ただ、この世で一番大事な女に贈りたい。」
俺の言葉に目を見開いて固まったかと思うと、小太りの店主は嬉しそうに笑った。
「――――そんなに強く思われる方は、幸せですね。ちょっとお待ちください!」
少しして店主が持ち出してきたのは、いくつかの宝石だった。種類はわからねぇが、その中でも特に藍色の石が目に留まった。
ナナの瞳の色と、良く似ていた。
「――――おい、これはなんという石だ?」
「それはサファイヤです。蒼い輝きが美しいでしょう? “慈愛と貞操”という意味があるので、婚約指輪なんかに使われることもありますよ。」
石の意味など気にするタイプでもねぇが、心のどこかで違和感を覚え、その石を置いた。
その横にあった、静かな輝きを宿す黒い石に目がいった。