第5章 絶望
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ナナの決断は思っていたより早く訪れた。
巨人が存在する限り人類を脅かし、自身の夢も叶えられないということを、実感したのか。
その表情は、昔の愛らしいだけのあいつの顔ではなかった。
「……なぜだ。」
「調査兵団に入団させて欲しいと、直接お願いするためです。」
「……あいつは昨日招集をかけられて王都にいる。」
「そう……ですか………。」
「……行くところがねぇなら、入って待つか。」
「………はい。お言葉に……甘えさせて頂きます……。」
俺はナナを連れて、兵舎に入った。ナナを見た兵士がザワつき、視線が集まるのを感じる。
「ちっ………。」
こいつは目立ち過ぎる……。
もし本当に入団しようもんなら………毎日あの視線が注がれるのか。気が気じゃねぇ。
渦巻く感情を抑えながらとりあえず食堂に行き、向かい合って椅子に腰かけ、俺はナナに温かい紅茶を差し出した。
「世話になってたっていう、シガンシナ区の病院の人間は無事だったのか?」