第53章 惜別 ※
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俺の望んだ結果じゃねぇか。
ナナと歩むのはエルヴィンだと。
頭では分かっていた。
だが、今までナナと培ってきたものが無かったことになる、それがたまらなく悔しかった。
みっともなく漏らしたその本音を、ナナは目に涙を浮かべて受け止め、俺の髪を撫でた。
律儀なこいつのことだ。俺との関係が曖昧なまま、エルヴィンに抱かれるとは思えねぇ。
なのに意地悪くあてつけのようにナナを責めた自分が虚しい。
縋るように情けなくナナを抱き締めていた腕をゆるめて上体を起こすと、まるで顔を隠すように両手で目を覆い、ナナがポツリと呟いた。
「――――――――残酷で最低なことだと分かっています。でも、日が変わるまでは――――――ナナ・エイルの心を、伝えてもいいですか。」
「―――――………。」
「――――――――好き。」
「―――――やめろ、お前はエルヴィンを選んだんだろう。」
「――――好き。大好き。愛してる。10年前からずっと。」
「―――――やめろ!」
ナナの両腕を掴んでその顔を暴くと、ナナは顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた。