第53章 惜別 ※
リヴァイさんが言う、「なんだ」「どうした」が好きだった。
いつだって私の話をちゃんと聞いて、受け止めてくれた。このソファでじゃれあって、私がどうでもいいことを言っても、その話の先を聞いてくれた。
何度も叱ってくれて、何度も頭を撫でてくれた。
何度も何度も抱きしめてキスをしてくれた。
何度も身体を重ねて、その度に数えきれないほど――――――愛してると、言ってくれた。
「―――――……じゃ…あ……これで、失礼……します……。」
この場を設けた意味はこの関係の終わりを告げることだった。それが終わった以上、長居する必要もない。
私がソファから立ち上がると、その手首が弱く掴まれた。
そのささやかな手の温もりに触れただけで、私は堪えていた涙を到底我慢できなかった。
「――――――………っ…………。」
目をやった先のリヴァイさんはうつむいたまま、その表情は見えない。
「―――――あと2時間は、俺のナナか?」
「―――――――……!」
「―――――そういうことだろう?」
「……………。」
「そうだと、言えよ………。」
深く俯いたまま、絞り出すような声でリヴァイさんは言った。最愛の人を自ら傷付けている事実が、苦しい。
「―――――はい………。」
私が小さく肯定すると、リヴァイさんが顔を上げた。
その目は、静かに昏い。
先ほどよりも強く手首を引かれ、リヴァイさんの身体の方に倒れ込んだ。
何も言わないまま、リヴァイさんは強く強く私を抱き締めた。
息が、できなくなるほどに。