第52章 盤上
「―――――リヴァイさんを愛しているのに……あなたのことを拒絶できない私は、汚い…………。………苦しいです………、私のことはただのいち兵士として………見て頂けませんか………。そうすれば私も、エルヴィン団長の事を―――――敬愛し、忠誠を誓うだけの兵士に、なれる……。」
エルヴィン団長の胸を押し返して距離と壁を作りながら、考えつくしても答えが出ないその混沌とした胸中を静かに吐き出した。
「―――――そしてまた夜な夜な君がリヴァイに鳴かされる悩ましい嬌声を聞いて過ごせと?」
その冷たい声に背筋が凍った。
聞かれていた、そんな羞恥心よりも先に私を支配したのは、その静かな声に込められた苛立ちと怒気だった。
恐る恐るゆっくりとエルヴィン団長を見上げると、見下ろされるその蒼は、エルヴィン団長の瞳には見たこともないほどの支配欲を滲ませていた。
「―――――ごめんだね。俺は意外と嫉妬深いし、独占欲が強い。」
ドクン、と、心臓が破裂しそうに跳ね上がる。
捕食者に睨まれたネズミのように息を荒げて、その圧倒されそうな空気に耐える。
「俺は俺の腕の中で君を鳴かせたい。―――――そして言わなかったが、これもなかなか勘に障っているんだが。」
低く艶のある声で耳元で囁かれると、全身が総毛だつように震える。そして私の耳のピアスをかり、と噛んだ。
「――――……やっ、ぁ……………!」
「――――リヴァイからの贈り物だと言っていたね?――――君には黒より青のほうが良く映えるのにな。君の身体に穴を開けて自分の印を埋める―――――か、リヴァイらしい。」