第52章 盤上
「あぁそれと、訓練兵団への勧誘行脚だが。」
「はい、調査兵団に勧誘するために、訓練兵団をいくつか回ってその意義を演説するというあれですね。」
「君も行くか?」
「!!いいのですか?!」
思ってもみない提案に、ぱあっと気持ちが明るくなる。だって、エレンたちに会えるかもしれない。
「ちょうどサッシュとリンファとナナに依頼しようと思っていた。」
「う、嬉しいです……!」
サッシュさんとリンファと、遠方に出張に出る。こんなワクワクを感じたことがない。
「その人選は、あの……私の……ためですか……?」
エルヴィン団長がそんな私情を挟むわけがないと思いつつも、あまりに私に嬉しい人選だったので、思い上がった質問をしてしまった。
「いや?調査兵団のためだ。」
「調査兵団のため……?」
「訓練兵が憧れそうな、歳が近くて突出した実力を持つ人材を寄せ集めたら君たちになった。サッシュの戦闘能力、リンファの立体機動術、ナナの医療班での動きとまぁ………。」
「まぁ……なんですか?」
「その美貌で健全で血気盛んな男子たちを釣って来てくれるかな、と。」
「…………。」
リヴァイさんだったら絶対に行かせないと言いそうなのに、エルヴィン団長は調査兵団のためなら私を餌にするのも厭わない。
少し冷ややかな目線を送ってみても、ただ笑顔でかわされるだけだった。
「―――――せいぜい釣れるように、頑張って愛想を振りまいてきますね。」
「はは、怒らないでくれ。期待している。」