第52章 盤上
王都から兵舎に戻ってから、約束通りワーナーさんの日記を貸すためにエルヴィン団長に届けた。
「―――――少しずつ真実が解き明かされていくのは、実に楽しいね。」
エルヴィン団長が日記をパラパラとめくりながら、呟いた。
「―――――あ、真実と言えば……。」
「どうした?」
「――――前にエルヴィン団長は仰ってたじゃないですか、ザックレー総統は王政に忠実なタイプだと。」
「ああ、今回の提案も想像通り、資金面を理由に取り付く島もないくらい却下されたろう?」
「―――――本当に、そうなんでしょうか。」
「………なに?」
コーヒーをエルヴィン団長の手元に置くと、エルヴィン団長はその私の方へ身体を向き直して、興味深そうな目を向けた。
「本当は私たちに近い想いを持っていらっしゃって、でも何かの目的のために――――――王政への忠誠を演じているのかな、と感じました。」
「そう言ったのか?ザックレー総統が?」
「いいえ。ただ、私の話への反応や返答……そしてチェスの戦略から……そうかな、と……。でもただの想像です。あまりあてにしないでください。」
エルヴィン団長は顎に手をあてて少し思考したあと、私の頭を撫でた。
「―――――君の洞察力と観察眼は信頼している。参考にするよ。」
私はくすぐったくて嬉しくて、少し頬を赤らめて笑った。