第5章 絶望
「………苦しむ人々を前に、己の保身を優先するような人間を、私は父親とも、医師とも認めない!!あなたは昔、私に病院を継がせないと言ったけれど………こっちから願い下げだ、クソ野郎!!!!」
「……………。」
「私は今日限り、オーウェンズを出ます。」
「………お前もクロエと同じか!!!愚かな……!私が守りたいものを否定し……私を否定し、去っていく………。養ってやった恩を仇で返すのか!」
「………………ごめんね。でも、私はもうあなたの元へは帰らない。」
院長室の扉を閉め、廊下を歩き出した時、叫び声が聞こえた気がした。
父は、きっと母の事も私の事も愛していた。
でも、それ以上に家を、名誉を愛していたんだ。私たちは父のお人形にはなれなかった。
私の決断をロイとハルに伝えた。
ロイは最後まで反対し、ついには和解できないまま別れることになってしまった。
でも、私はもう止められなかった。
ハルは、ついにこの日が来てしまったといった表情で、最後まで自分の気持ちと葛藤しながらも私を応援し、見送ってくれた。私は最低限の荷物を持って、馬を駆った。