第52章 盤上
「ああそうだ。ケイジ・コリンズとマシュー・ブライトンの入団手続きも滞りなく進めてくれて感謝するよ。」
「いえ。3月の入団で問題なく整っています。ケイジさんは聞いていましたが―――――、マシューさんはまた急でしたね。彼も訓練兵を経ていない方、ですよね……?」
「ああ。マシューもまた、別の隊で動きが優れていた一般兵だそうだ。地獄絵図を目の当たりにして、何かを変えたいと言っていたな。――――――果たして、何が出て来るのか楽しみだな。」
エルヴィン団長が意味ありげにふっと笑う。
「……え……?」
「いや、こっちの話だ。――――それからナナ。先日私が実家に帰っていたのには意味があってね。」
「……はい?」
エルヴィン団長が一通の手紙を差し出してきた。
それを受け取り、エルヴィン団長に開けても良いのか尋ねる意でその目を見上げると、エルヴィン団長は静かに頷いた。
その封筒に封はされておらず、中の手紙を開き、目を通す。
そこには、記し手が何かを謝り続けた贖罪の文章がつづられていた。
「―――――『私がこのようなことを頼むのはいささか門違いも甚だしいと分かっていますが、願わずにはいられないのです。どうか、どうかこの世界の真実を解き明かして頂きたい。私の志を継いでいる息子は必ずあなたに辿り着く。もし出会えたなら、人類のため、そして私の最愛の息子のために―――――――――力を貸してやって欲しい。――――――アーサー・ウィルソン(アラン・スミス)』…………アラン、スミス………?!」
「――――――私の、父だ。」
驚愕で、手が震えた。
目を見開いてエルヴィン団長を見上げると、穏やかな蒼が私を映した。