第51章 西部調査
「―――――すまない………。」
リヴァイさんの口から苦しく悶えるように絞り出されたその言葉が何を指しているのか、私には分からなかった。
身体が合わさる場所から、リヴァイさんの鼓動と温かさを感じる。この腕の中で、この感覚だけに溶けてしまえたら。
このままリヴァイさんと2人、どこか遠くに逃げてしまえたら。そんな叶う事のない妄想を押し込めて、どちらからともなくその身体を離した。
「―――――悪かった。ゆっくり休め。」
「はい、リヴァイ……兵士長。」
リヴァイ兵士長が振り向くことなく部屋を出た。
明日も早い。
私も休もう、と疲れた体をベッドに横たえると、今日のことが目まぐるしく思い出される。
リヴァイ兵士長と初めて壁外調査に出て、その力を目の当たりにした。
リヴァイさん、なんて呼んでいたことが恐れ多くなるほどの―――――――――全神経を持っていかれるような、圧倒的な存在感と信頼感。そして兵士を静かに鼓舞するカリスマ性。
前回の壁外調査で兵士が巨人と戦うところを見たけれど、リヴァイ兵士長のそれは次元が違う。
この残酷な世界から自由の空へ導いてくれる、それはまさにワーナーさんに教えてもらった救世主そのものだ。
もちろん小さく理解していたつもりだったけれど、私は痛感した。
私がエイルという純真で無垢な少女のままでないように、リヴァイさんもまた、あの頃の彼とは違うんだ。
私が横に並びたいと願った彼の隣のその場所は、私には遥か遠いものなのだと知った。