第51章 西部調査
「どうされましたか……?」
「―――――………兵士ではなく、ただのナナとして聞いて欲しい。」
「…………??はい………。そこじゃなんなので、こちらに、どうぞ………?」
私は部屋の中のソファにリヴァイ兵士長を促した。
ゆっくりと歩を進めたかと思うと、ソファに座らずに、私の手を引いた。
その腕の中に収まり、鼓動が早くなる。
「――――……苦しいんですか。リヴァイ……さん………。」
「………イサークを、死なせた。」
小さく呟かれた言葉に、リヴァイさんを強く抱きしめた。
「あなたのせいじゃない………。」
それ以上の言葉が出て来ない。
隊を率いることなど、完璧なリヴァイ兵士長にとっては造作もなく、心の負荷などないのかと、そう思っていた。
ないわけがない。
エルヴィン団長だって震えてた。
誰だって自分の判断で仲間を死なせるかもしれない重責は、恐ろしいんだ。
「―――――バリスを助けてくれたこと、感謝する。」
「―――――いえ、私にできることは微々たることで――――――それよりも、バリスさんの心を救い上げたのは、リヴァイさんです。」
「…………。」
「リヴァイさんがかけた言葉で、バリスさんも……イサークさんも……どれだけ救われたか。そして、私も―――――――……。」
「―――――意味がないと生きることが辛いように、死も意味を持たなければ、あまりにも辛い。」
「………??」
「お前の母親が言った。俺はそれを実行しただけだ。せめて死にゆく者に安堵を……その死に意味があったと伝える。お前に出会ってなければ俺は生きる意味など見いだせなかった………そしてお前の母親に出会っていなければ、仲間の死に意味を持たせることなど考えることもなかった。」
「―――――お母様が………?」
お母様がリヴァイさんに――――――……奪還作戦で、出会ったのはほんの一瞬だったはずなのに。私は驚きを隠せなかった。
リヴァイさんの腕に、力が込められる。