第51章 西部調査
それからほどなくして、隊は再び移動を開始した。
壁に沿って、壁の破損がないかを調べる。
ここまでに数体の巨人を討伐していたからか、頻繁に巨人と遭遇することはなかった。
やはり南部に比べると随分少ない。
馬で駆けると、その脚に弾かれて飛ぶ白い人骨。奪還作戦で彼らが命を賭して巨人を減らしてくれたんだ。
リヴァイ兵士長が言った、彼らの死に意味を持たせるのは、私たちだ。
この世界の真相を暴いて自由を勝ち取ることは、もはや少女の夢物語などではなく、あまりに多くの血にまみれた、抗うべき現実になっていた。
結局予定していた壁の調査も終え、壁の破損は一切確認できないまま帰路についた。
日が落ちるまで信煙弾が使われることもなく、月が昇る頃にクロルバ区に帰還した。
バリスさんはすぐに病院に運び、そのまま大事を取って入院する手続きを済ませ、他の負傷者は改めて部屋で診察、手当をした。
長い、一日だった。
最後の1人の処置を終え、部屋に一人になったところで、扉が鳴った。
「はい、怪我ですか?どうぞ。」
扉を開けたのは、リヴァイ兵士長だった。途端に背筋が伸び、私は椅子から立ち上がった。
「――――負傷者の処置は済んだか。」
「はい、今しがた。リヴァイ兵士長は、お怪我はありませんか。」
「――――ない。」
「良かったです。」
「―――――…………。」
それ以上の言葉を紡がないまま、目線を斜め下に下ろしたままリヴァイ兵士長は動かない。