第51章 西部調査
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まさか、自分が隊の進路指示を任されることになるなんて思ってもみなかった。
私の判断にみんなの命がかかっている。
一時的とはいえ、こんなにも怖くて重いのか。
まだ私は弱い自分自身のことを信じきれていないけれど、リヴァイ兵士長のことを誰よりも信じてる。
そのリヴァイ兵士長が信じた私なら、信じることができる。
私はやれる。
冷静に戦局を見極める。
その時、右側後方から赤の信煙弾があがった。
確実に交戦している左手前方に向かって進路を巻く。
リヴァイ兵士長がすぐに奇行種を討伐するに違いない。その後戻ったら一番に、ダメージを受けた隊の再編成をするはずだ。
再編成を最短でできて、且つ右手後方がまだ交戦していないなら避けられるかもしれない。
だけど、本当に?これでいいのか。
間違っていたら、誰かが死ぬ。隊の全滅だってあり得る。
私はごくん、と生唾を飲んで、震える手で緑の信煙弾を左手前方に向かって打った。
私の指示通りに隊は進路を変えた。
やがて交戦していた左手前方の班に追い付いた。
―――――その時。
私の目に飛び込んで来たのは、リヴァイ兵士長が空を舞った姿。かと思えば、目で追えない程の早さで奇行種の目を切付け、視界を奪った次の瞬間には、項の肉が削がれていた。
崩れ行く巨人の影から、自由の翼を靡かせて舞い降りる姿に、私は魅入っていた。
―――――なんて圧倒的強さと、美しさ。
これが、人類最強の兵士。
私はハッと我に返り、報告をする。
「――――リヴァイ兵士長!!」
「――――状況は。」
「右手後方から通常種1体。回避したく進路を南に少しずらしました。隊の再編成をされますか。」
「ああ、そうだな。伝達を頼めるか。」
「はい。」
リヴァイ兵士長は怪我人を本隊に戻し、欠員を本隊からあてがうなどの再編成を行った。私は各隊に伝えるべく、馬を駆った。
再編成してからしばらくして、私たちはウォール・マリアにたどり着いた。