第51章 西部調査
ナナが発って数十分。
遠くにナナが駆けてくる姿が目に入った。
俺は無意識に大きく息を吐いていた。安堵したのだろう。
「―――――戻りました。」
「状況は。」
「耳から目元への裂傷を縫合し、処置は終わっています。戦闘に当たるのは避けた方が良いですが、索敵として並走するには問題ないと思われます。」
「―――――了解だ。よくやった。」
「はい。」
「――――このまま進むぞ。」
進路を変えずひたすら進むことを告げた途端、左手前方の班からの信煙弾を確認した。
赤、続いて黒。
「―――――ちっ、奇行種か――――――。」
左手前方の班の構成を頭に浮かべる。
「―――――キツイ、かもな。バリス、援護に行け。」
「はい!!」
本隊を離れ、バリスを援護に行かせる。
次の瞬間、左手後方からまたもや信煙弾が放たれた。
黒だ。ついてねぇ。
よりによって今打撃を受けた班に、更に奇行種か。
「――――ちっ………本隊が手薄になるが――――仕方ねぇ。アーベル、援護に行け。」
「はい!!」
もしどちらかの隊が仕留め切れなければ――――――手薄な本隊を奇行種が急襲することになる。
「進行方向を変える。ナナ。右に巻く。信煙弾を撃て。」
「はい!」
ナナは指示通り素早く信煙弾を放った。
しばらくして、右手前方の班からペトラが駆けてくるのが見える。