第51章 西部調査
ナナを壁外で一人にする、そんな日が来るとは想像もしていなかった。
壁外に出さず、俺が全て片付けてやる。誰にも、なんの危険にも触れさせずにいることを、守ることだと思っていた。
幼い間はそれで良かったのだろう。
だが一人の兵士として、女として成長したナナにとってはそんな雁字搦めの愛し方はあくまで俺の存在意義を見出すためのエゴに過ぎず、本当はほんの少しの手助けをしてやるだけで、あいつはあんなにも逞しく仲間を救うべく駆けていく。
王都に戻ったナナを取り戻すか否かの話をしていた時――――――エルヴィンは「檻の鍵を開けてやるくらいの手助けでいい、ナナは自分で羽ばたく。」そう言った。ナナの事を信じ、その力を最大限に引き出す方法を、理解していた。
――――――敵わねぇよ。
ナナと共に歩めるのは、エルヴィンだ。
俺がいくら小手先で愛し方を変えようとしても、もともとそれを持っているあいつに敵うはずがない。
なら俺にできることはなんだ?
兵士としてあいつを育て、導くこと。
そして、あいつらを引き裂くものがあるとするなら、それを滅することか?
このナナへの想いを封じて、その役回りに俺は甘んじることができるのか?また暴走して、無理にその身体と心を自分のものにしようとするんじゃねぇのか。
「――――――長、リヴァイ兵士長!」
「あ?」
「どうしたんですか、ぼーっとしてましたよ。」
「――――あぁ、悪い。」
「やはり少ないですね。このままウォール・マリアまで辿り着けてしまうんじゃないですか。」
「ああ。」