第51章 西部調査
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門が開いて駆け出すその瞬間は、何度経験しても慣れない。
地下街から初めて外に出た時の自分の世界が広がるあの感覚。
捕われの身から自由を求めて抗うその瞬間。
今回の調査はそんなに重くない。
エルヴィンやナナの予想で行くと、巨人との遭遇率も高くはないはずだ。
廃村や荒れ果てた農耕地を抜け、ウォール・マリアを目指して進む。小一時間進んでも、巨人の気配はなかった。
「―――――静か、ですね。」
本隊で並走するアーベルが呟いた。
そう言った矢先、左手後方の班から信煙弾が放たれた。
赤。
通常種だ。
「このまま進む。アーベル、偵察に行け。戦闘が始まっていたら加勢しろ。」
「はい!!」
アーベルに指示を飛ばした時に後ろに位置するナナが目に入る。不安そうな顔をしているものの、前を向いて腹を据えている。
問題なさそうだ。
追加の信煙弾もなく、通常種は削いだか―――――巻いたようだ。
しばらくしてアーベルが本隊へ戻った。
「報告します!通常種1体を討伐!1名が軽傷ですが、目から耳にかけての出血が見られました。」
「―――――ナナ。」
「はい。」
「処置に行け。済んだらすぐに戻れよ。」
「――――はい!」
ナナは頷いて馬の進路を変えた。