第51章 西部調査
翌朝、出陣の為にクロルバ区から外へ続く門前に待機している中、前回同様リヴァイ兵士長は一人一人の兵士に声をかけて回る。
リヴァイ兵士長の声がかかった兵士から、闘気が漲るのがわかる。
リヴァイ兵士長はエルヴィン団長の事を人を惹きつける天才だと言うが、リヴァイ兵士長だって同じだ。
いや、魅了するという点においては、エルヴィン団長よりも突出しているんじゃないかとさえ思う。
性別問わず人の心を魅了して離さないのは、その圧倒的強さと、分かりにくいけれど情に厚く、誰より仲間思いなところだと思う。
この人の背中を見ていると、なんでもできそうな気がして、その背の翼が本当に生えているんじゃないかと思わせる。
私は、そんな彼の片翼に、なりたかったんだ。
でも私は片翼どころか、ただの重りでしかないんじゃないか。
嫌な思考が頭を巡る。
断ち切らないと。
リヴァイ兵士長が私を壁外に出して大丈夫だと信じてくれた、それに応えるんだ。
――――いくらそう思っても、心がアンバランスでうまく自分を鼓舞できない。小さく手が、震える。
私のところへ来たリヴァイ兵士長が私を見つめる。
その目を見ることが出来ず、ただ質問に目を逸らしたまま答えた私の顔を乱暴に掴んで、その三白眼は無理矢理視線を捕らえた。
「―――――おい、聞いてんのかナナ。」
「聞いています……!」
「じゃあなんで目を合わせない―――――。なんで、震えてる。」
「………大丈夫、です。」
「てめぇのその大丈夫は大丈夫だった試しがねぇ。」
「―――――………。」
言い返せない。